自分で作った服を着るこということ

実は…私は数年前までミシンの使い方すら知りませんでした(学校で習ったはずなのに、あれ?!)実家の母からお下がりのミシンをもらったことをきっかけに、どうにか使えるようになろうと思ったのですが、まず糸をどういう風に通していいのか分からないというところから始まりました。

 
息子の小学校の家庭科の教科書を頼りに見よう見まねで糸を通したところで、その先が進みません。ボタンを押せばどうにか進んで行くことが分かりました…という具合に本当に一個一個教科書と格闘しながらのスタートでした。

当然、息子たちの通園通学バッグすら作れないので、進学の節目節目に訪れる難は、母に丸投げでここまでやって来たという状態でした。

それが、草木染めや沖縄の藍染めと出逢ったことがきっかけで、どうにか自分の力でこれらをバッグや服にしたい!という闘志が沸き、この前の春、初めて自分で服を作ってみることにしたのです。

手始めに、真っ白なリネン。これでチュニックを作れたらいいな…と思い、購入したパターンを黙々と写します。この時点では着られる状態のものが出来上がるのか半信半疑でした。とにかく本の指示通りに手を動かします。針目が印から脱線すれば糸をほどいて途中からやり直し。針の速さはもちろん亀のごとく一番遅い設定です。

ミシンで物の形を作っていくということには「想像力と空間認知能力」が必要だということをひしひしと感じました。どことどこがくっついて、どの部分になるということを頭の中で把握できないと、本に書かれている説明が全く理解できないのです。直線とカーブの線が一体どうやって一緒になるのか…本当に理解に苦しみました。

出来上がった記念すべき初めての服がこちらです。

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今思えば、なんともまあ粗削りな… 襟の見返し部分はめくれ上がってしまうし、そもそも布の端を処理するロックミシンがないのでジグザグ縫いで代用するのですが、そのジグザグの幅を広く設定して縫ってしまったので裏の布端の見た目があまりよろしくなく…

この服、とても優秀作品とは言い難いですが今でも現役で着ています。細かい作りは出来ていませんが、上質なリネンを使っていることもあって着心地は抜群なのです。何回か洗濯をしてクタっとなった今のほうが落ち着く感じがします。

あれから半年経ちますが、このミシンで物を作り上げていくという仕事に魅了された私は、何かしらせっせと作ることが日常になりました。

今までの私だったら、自分で作った服を着て外へ出るなんで恥ずかしくて出来ないことでした。どちらかと言えばブランドに憧れ、それを身に着けることで自分を主張できるという考え方でした。

しかし、一旦その考え方から外れると、自分で作る服を着てどう恰好良くみせるか…そういうことの面白さもわかってくるようになりました。もちろんTPOはとても大切ですので、仕事上やフォーマルの場では相応の恰好をします。

自分で服を作った服を着るということは、今の私にとってはある意味自分の「ユニフォーム」のようなものであり、いつかは本を参考にせずとも全てを自分でデザインできたらいいな…と思っています。

 

もし、学生時代に戻って自分の進路をもう一回決めることができるなら。今の私だったら間違いなく染色やデザイン関係の勉強を選ぶだろうなと思います。あの時は就職のしやすさとか、体裁とかそんなことばっかり考えて、本当に自分のやりたかったことをやりたくて進学したのだろうか…と思い返すことはあります。

 

しかし、そこには後悔の気持ちだけがあるわけでなく、あの時の今の生活には直結していない選択も、今の私を形成するには必要不可欠な選択であり、遠回りしたことで見えなかったものが見えてくるということもあると信じています。

プロとして活躍されている方の作品を拝見すると本当に素晴らしく刺激を受ける一方で、自分の作品を見て撃沈することが多いです。こんなものSNSに挙げてもいいんだろうか…と思いながら、やっぱりどこかに「わが子」のかわいさと、自分の作品を見てもらい、そして上手になっていきたいという気持ちがあるから、今からもきっと私は布しごとを進めていくのだと思います。

 

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

福岡県出身、山口県在住。時々沖縄にふらり。 キッチンや庭でひそかに行うゆるゆる草木染め実験も大好きです。