藍染めで毛糸も染められる
草木染めでは天然の素材が染められることは良く知られています。通常ミシン糸として広く使われているシャッペスパンなどはポリエステル繊維なので、一瞬、布と一緒に染まったかのように見えますが、洗濯などを重ねると元の色に戻ります。これは「染まった」のではなくて、繊維の上に色素が「乗っかっていた」だけなのです。
シャッペスパンミシン糸とは
ポリエステル100%
左撚りシャッペスパンは、ヨーロッパの長い伝統の中で育った「シルクシステム」と呼ばれる特殊な加工方法で紡績された、ポリエステル高級縫い糸です。スパンシルクのすぐれた加工技術を受け継いだシャッペスパン縫い糸は、強さと美しさ、ばつぐんの縫いやすさを備えています。
私の藍染めの師匠(と勝手に呼んでいる)の工房で見たのは、真っ白な服を藍染めで濃く染める時には、染めた後のことを考えて予めミシン糸に藍色のものを使って縫ってありました。こうすることで、染めた後もミシン糸だけが白くなることなく藍色と違和感なくなじむというわけです。
毛糸は天然素材なので、染まります。タンパク質でできているので綿や麻などよりも染まりやすく、濃染処理がいらないともされています。もちろんですが、アクリル毛糸は化繊ですので草木染めには適しません。
藍染めは煮出したり媒染を必要としないので、一般的に言う草木染めのくくりとはちょっと違うかもしれませんが、むしろ温度変化に弱い毛糸などを染める時は都合がいいのかもしれません。煮出して冷たい水に浸そうものなら、場合によっては縮み上がることがありますので…。フェルトみたいになると焦ります。
さて、藍染めで毛糸を染める方法ですが、前処理は特に何もしていません。表面の油分などを取り除く精錬が必要だとする文献も読んだことがあるのですが、何より無知な私にとって、せっかくのウールの毛糸がフェルト化してしまうことが一番恐ろしいことだったので、今回はぬるま湯で優しく揺り洗いをして水分を切ることだけにとどめておきました。
あとは、布と同様、藍建てしたバケツの中に優しく浸して引き上げ、きれいな水の中で濯ぐことを数回繰り返しました。色止めには酢を混ぜた水を使いました。
数回染めた割には想像より色が薄かったですが、白い毛糸がきれいな空色に染まりましたよ。若干酢の匂いがするのは気になるところですが、これは仕方ないですね。そのうち薄れますし、口にできるものなので害はないでしょう。
気になっていた風合いですが、こちらも損なわれることなく、ごわごわもせずに染められたので良かったです。
実際に染めた毛糸を使ってみる
染め上がったこの毛糸を使って、作品を作り上げてみることにしました。今回はラボスケールの藍染めなので、毛糸は1玉分しか染めていません。何かを編むことは不可能ですので、毛糸で刺繍をすることにしました。
本当は毛糸用の刺繍針があるかもしれないのですが、とりあえず今回は持っている普通の布用の刺繍針の中で一番太いものを使いました。フランス刺繍針の4番(刺繍糸を6本一緒に刺す時に使っているもの)です。針穴は大きいとは言え、この毛糸が通るかどうか不安ではありましたが、糸通しで十分通せましたよ。
このあたり、無知がゆえ深いところは何も考えず、普通の糸で刺繍をする時と同様にひたすらチクチク刺していくのみです。手法などは変えていません。
相性のいい布を見つける
あまり布目が詰まっている布だと大変な困難が待ち受けているだろうと予測し、今回は厚めでタテ糸・ヨコ糸共に太く、ほどよくざっくりしている布を使いました。
大ファンだと以前からこのブログでも言っているポランカのリネンさんの布ですが、その中でも一番厚手の種類に入る布です。
見ためは結構手触りが硬そうに見えますが、水を通すとリネン独特のしなやかさが出てきて、ほどよいハリも兼ね備える上質な布です。
今回の毛糸のように太い糸を刺繍する時はもちろんなのですが、この素朴な風合いも刺繍とベストな相性なのです。
今までは薄手のポーレ・ナチュラルを愛用することが多かったのですが、今まで通り、服にはより柔らかいこちらの薄手の生地、バッグやポーチなどには厚手のラス・ナチュラルを使い分けていこうかと思います。どちらの生地も私の作品には欠かせない主力メンバーです。
リネンと毛糸の組み合わせ
出来上がった作品はこちらです。
リネンのナチュラルさと、毛糸のざっくりした刺繍が暖かい雰囲気を醸し出すバッグに仕上がりました。一色の刺繍も味があってなかなかいいものです。
糸はまだ残っていますので、また機会を見ていろんなパターンの刺繍をしてみようと思います。
とても楽しい染め~刺繍の体験でした。
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