2カ月前、またふらりと沖縄に行ってきました。今回はいつもよりだいぶん時間が空いて実に一年ぶり。…でも、沖縄の自然に触れて草木染めのことを少しでも吸収するというのが第一目的というのはいつもと変わりません。
観光地にそんなに興味はないけど、沖縄の草むらばかりやたら気にしながら歩く私の変わった旅は、今年も続きそうです。一人旅もノープロブレムです。どこまでも行きます!狭い道もがんがん進みます。
月桃の根を手に入れる
さて、今回も月桃をいただいて帰ってきました。やんばるの森の中に自生している月桃の根っこです。
こんなに根っこ!あ、月桃って、外に出ている「茎」と思われている部分は、本当は茎ではないのです。
本当の「茎」は地下茎として、土の中にあります。なので、これは根っこでもあり、茎も入っているということになります。しかし、根に近い部分のほうが濃いピンク色に染まるということには変わりありません。
月桃の土に埋まっている部分って、掘り起こすのに相当の労力を必要とします…というか、一人で掘り起こすことは時間がかかりそうで私にはなかなか難しそうです。月桃は地下茎で増え、土を包むように生えているので、株を丸ごと掘り起こすことは力仕事で結構難しいのです。
今回、知り合いが敷地を掘り起こすことがあり、その際に出てきた月桃の根っこを取っていてくださったので、有り難くいただくことにしました。でもこれをこのままの状態で本土に送るとなると、かさばるので大変ですよ。いつもお世話になっているお宿が野外炊飯もできる施設なので、私はひたすら薪割りの斧を振り下ろし、月桃の根っこを郵送しやすいように最低限小さくして段ボールに詰めて自宅まで送りました。なかなか普通では経験できない感じの沖縄旅行です。
月桃染め、はじまり
無事に自宅まで届いたところで、わくわくしながら月桃染めを始めます。今回は色んな種類の生地を染め、その染まり方の違いや改善点の確認をしました。
今まではせいぜい偽茎の部分までを使って染めていたのでなんとか包丁で細かくすることはできたのですが、今回は硬い根っこ部分です。これは手強い相手!
包丁やキッチンばさみなど、そんな生ぬるい道具では太刀打ちできません。うちには斧の類もないので、唯一使えそうな太枝切狭で細かく刻むことにしました。作業を夜中にやっていたら家族に怖いと言われました。
上の画像では、まだ細かくしきれていないものもありますが、いい塩梅になったところで、火にかけていきます。一時間半くらいたった頃、こんな感じの色です。
お湯の中には、重曹も入れてpHを上げます。
染色についての詳細は上の記事の中で書いています。
染めた結果、こんな感じになりました。
今までで一番濃いめに染められたかも…と喜びもつかの間、乾いてからチェックしてみると、一部分にムラがありショック!
見やすいようにわざと暗い画像にしています。丸で囲った部分、お分かりでしょうか、若干薄くなっています。「このくらい、大丈夫だろう」と思い込みたいところですが、布を一枚広げると、結構目立ちますので、濃く染められた!とぬか喜びした分、ショックも大きいです。
このダブルガーゼの生地、実はストールにしようと思って180cmの長さなのです。これでは使い物にならないかな…と思っていたところ、「そのムラをどうにか生かせんの?」という意見をもらい、何かできないか思案中です。ムラも良いように言えば味のある作品ですので、これを生かせるように工夫をしたいと思います。結構手間をかけてここまで濃く染めたのでボツにしてしまうのはもったいない!
月桃染めでムラが出来る原因
- 染める前に、沸騰するお湯の中に布を入れ、余分な油分や汚れ等を落としました。
- 濃染処理は、それこそムラが出ないように、最新の注意を払いました。
- 浸漬させる際は、液から顔を出す部分がないように、落し蓋のようなもので空気すら入らないようにしました。
…これだけの注意を払っても、やっぱりムラが出てしまう…目下の悩みです。今、仮定している原因は、濃染処理をムラなくやっているつもりで、実はできていないのかもしれない…というところが一番考えられることです。
一度染めた後の液って、びっくりするくらい色が薄いんですよ。量が極端に減ったわけでもないのに、色だけが薄くなってる。ぐんぐん色の成分を布が吸い込めば吸い込むほど、ムラのある部分との色の差ができてしまうのかな…と思っています。そこのところを、もう少し考えないといけません。
ちなみに、薄くしか染まらなかったところの穴埋めをしようと何回も染めなおしても、一度できてしまったムラが消えることはありませんでした。むしろ目立つようになってしまったかも。嘘に嘘を重ねて、結果さらに大変なことになるという、ドツボにはまった人生の縮図のようなものを鍋の中に見た気がしました。
きれいに染まった布もある
ベネシャン織り(繻子<しゅす>織りの一種)のリネン生地。
繻子織
繻子織(しゅすおり、朱子織とも書く)は、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)五本以上から構成される、織物組織(三原組織)の一つである。経・緯どちらかの糸の浮きが非常に少なく、経糸または緯糸のみが表に表れているように見える。密度が高く地は厚いが、斜文織よりも柔軟性に長け、光沢が強い。ただし、摩擦や引っかかりには弱い。
タテ、ヨコ共に細い番手の糸が使われていて、しかも密に織られているので、ソフトなサテンのような上品な感じをうけます。薄い生地だけれど、手に取ると結構ずっしり感があるかも。
この布を月桃で染めてみると、濃くは染まらなかったけれど、二回染めでもムラが出来ません。最初からこんな色の生地を買ってきたような感じです。
ダブルガーゼと同じ濃染処理をしたのに…ムラの出来やすさは生地にもよるのかな…
この最高にきれいに染められたと思った生地、別の意味で欠点がありまして…
密すぎて非常に縫いにくい!!
ミシンの針が入りづらく、バッグの持ち手を作ろうと4枚重ねにして縫った時、ミシンの針が曲がりました(笑)。せっかくきれいな生地なのにもったいない!
厚めの生地を染めた場合
起毛のオーガニックコットンを染めてみました。ピンク色が月桃、黄色がローズマリーです。ダブルガーゼの時ほどではないものの、若干ムラが出始めたので二回染めで止めました。黄色のほうもムラがないわけではないのですが、月桃に比べると非常に目立ちにくいです。
月桃で出すピンク色は、深追いせずほどほどの濃さになったあたりでやめておくのが最善なのかもしれないと思っています。
番外編「フレッシュな月桃でないと染まらないのか?」
本土に住んでいると切実な問題なのが、フレッシュな材料がいつも手に入るわけではない、ということ。月一で沖縄に行けるのなら問題ないのですが、普通に生活をしていてそれはなかなか難しいので、私は、月桃を刻んでジッ○ロックに入れて、冷凍保存しています。冷凍しても十分に染められることは確認済みです。
これは沖縄から帰って来てからずっと放置していた月桃…あまりにも持って帰ってきた量が多く、冷凍庫に入らなかったのと、刻むことに対する集中力が切れ段ボールに放置していた次第です。でも、これ、全く問題なく染められるんですよ。周りを覆っている皮は剥いて、芯に近い部分を使います。
そして何よりも、放置していてもカビなどが大量発生していなかったことに驚きです。結構暖かいところに段ボールを放置していたので、開けておどろおどろしくなっていたらどうしようかと内心怖かったですが、安心しました。これも月桃の「防カビ作用」と言われるものなのでしょうか。。。
今回も楽しく染めることができました。また、さらなる経験を積める日が来るのを楽しみにしています。
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