ここ最近自分の毎日の日課になりつつあり、ここでも何回か記事にさせていただいている月桃染めの件ですが、ずっと淡い色した抽出できなかった私に上手に染めるためのコツを教えてくださる方がいらっしゃいました。自分では考えつかなかった方法にびっくり。まさに目からうろことはこのことです。今年の7月頃から月桃染めを実際にやり始め、私はずっと「水から煮出して媒染をする」中性抽出という方法でやってきました。しかし、皆さんがブログなどに書いているほど濃い色を出せないので、半ば諦めぎみでした。今回の月桃染めも前回と同じような淡い色になってしまい、自分的には失敗かなと思っていたその時…
SNSのフォロワーさんがまさに月桃染めをされている様子をアップされていて、そのワインレッドのような染液の美しいこと!突然で大変失礼なことを承知でコツを教えていただきました。
それは、「月桃を煮出す時に重曹などでアルカリ性に持っていき抽出すること」 だったのです。
月桃を煮出した汁に重曹を加えると一瞬で色が濃く変わることは予備実験の中で知っていました。しかしそれは月桃染めの色のイメージと似ても似つかない黄色みを帯びた茶色でしたので、私は(アルカリで染めるのは絶対ないわぁ…)と勝手に解釈し、却下していたのです。
実は重要だったのはそこから先の過程でした。アルカリ性に傾けた状態で月桃をグツグツ煮ると…最初は茶色だと思っていた煮汁はどんどん色が変わっていき、なんととっても濃いワインレッドに変化したのです。
今、この淡い色にしか染まらなかったリネンを染めなおしています。ずいぶんきれいな色に変化していますよ。染め上がりが待ち切れずそわそわしています。
この3か月間、どうしたら月桃を濃く染められるのかしら…と翻弄しました。文献を読んだり、いろんな方のブログにお邪魔したり…それでも全く見当もつかず、しまいには「沖縄と水が違うからに違いない」とまで思いたくなる始末でした。
過去に「月桃を染める時はアルカリ性ではよい色が出ない」と書いた記事があります。
この考えは違うことが分かりましたので訂正いたします。確かに染めた後の布を強いアルカリ性の液に浸漬させると黄変しますが、抽出の段階でアルカリ性に持っていってから染めるというのとはどうやら違うようで、アルカリ性=月桃の色が悪くなるということではなく、工程のどの部分でアルカリを使用するかによっても月桃の色が変化するということが言えそうです。
ちなみに、pHがどれくらい月桃の染液に影響を与えるのか簡単な実験をしてみました。煮出した染液にコットンを浸漬し、そこにpHの異なる水溶液を滴下した際の色の変化をご覧ください。月桃の染液はおおよそpH9~10くらいです。
染液との極端にpHの異なるものを滴下すると、退色、変色が著しいように見えます。あまり極端なpHの媒染剤を使わず希釈して使用したほうがいいと解釈したほうがいいのでしょうか…
つい先日使用した媒染剤はpH13付近のままの椿灰上澄み液でしたので今回は希釈し調整して再チャレンジしたいと思います。
アルカリ抽出のことを教えて下さった方は、次のようにもおっしゃっていました。数日煮込んで放置したり、数回新しい月桃に替えて煮出すこともあると…。本当に新しい情報を頂けて良かったです。このブログも初めて間もないですが、「月桃染め」で検索されてお越し下さる方もいらっしゃいます。参考にして頂けると幸いです。
この煮出した月桃からはこれ以上色素は出ないだろう…ともう少しで畑に持って行って腐葉土にしようとしているところにこの情報を頂き、月桃を畑にまく前で本当に良かった!ここでは手に入らない貴重な植物なので、こんなにどんどん色素が出てきて嬉しい限りです。まだまだ煮出せそうです。