7月下旬、とうとう初めての藍収穫をしました。春先の種まきから約三か月半。気温の上昇と共に、藍はぐんぐん大きくなりました。
藍を収穫する
去るGW過ぎに本葉が出たばかりの小さな藍の苗を畑に送り出した時の様子はこちらです。
毎日飽きもせずに藍の生長を見守るのが大好きでした。簡単に雑草を取り除いてやることと、少しだけ有機肥料を与えるくらいしかしておりませんでしたが……。植えてすぐの頃は忌々しいネキリムシとダイコンハムシという害虫にやられる苗もいましたが、残った株は特に病気にかかることもなく、大きな葉になりました。
藍の新鮮な葉でそのまま染める「生葉染め」という方法もあるのですが、木綿やリネンなど植物性繊維は薄くしか染まらず、また、濃く染めようとするとソーダ灰やら還元剤などが必要です。それでも想像しているほど濃い色にはならないと聞きました。さらに、葉が新鮮なうちに染めないといけないため、夏のこの時期にしか染めることができません。収穫した全ての葉をこの方法に使うのは無理だと判断しました。
今回、私は「泥藍」の方法にチャレンジしてみました。藍の葉の中には藍色のもとになるものが含まれていますが、まずはこの「藍色のもと」を引き出してやる必要があります。
泥藍作りにチャレンジ
藍を茎ごと刈り取り、泥やごみを水で取り除いた後、大きな容器に入れます。茎葉がひたひたに浸かるくらい水を入れ、重石をし一昼夜置いておきます。太陽熱を利用し、酵素の力を借りて水の中に水溶性の「藍色のもと」を引き出してやるのです。
この時に引き出される「藍色のもと」は、決して「藍色」なのではありません。水の色は蛍光がかかったような水色のような、緑色のような不思議な色になります。これが結構独特な匂いで…決して強い臭いではないのですが、私は高菜漬けの匂いに似ているかな…と思いました。(他の方の感想を拝見していると「ドブ臭い」や「ヘドロっぽい」などいろいろなことが書いてあり、それもなんとなく分かる気がします(笑))
茎葉を取り除いた後の水に石灰を投入すると…
石灰を入れてから、空気を含ませつつ必死に撹拌すること数十分。水が…薄い青緑色だったのにこんなに深い藍色になりました。水溶性の「藍色になる前」の状態から、水に溶けない「藍色」の物質になります。石灰を足しつつ撹拌すると、やがて泡は白っぽくなり、消えていくようになります。ここらへんで撹拌は完了です。匂いも高菜漬けから「藍」の匂いに変わります。
この状態でしばらく静置させておくと、この「藍色」の物質は下のほうに沈殿していきますので、不要になった上澄みは捨てます。捨てては水を加え、不純物を丹念に取り除きます。結構この作業に日数がかかります。朝、出勤する前に上澄みを捨てては水を足し、帰宅してから同じ作業をする日々でした。ちなみに上澄みは薄茶色、pHは12~13付近です。
土壌改良のためにそのまま畑に戻すということを聞き、私もそのようにしました。
そして沈殿した藍色の物質を布で濾します。容器の一番底には、溶け残りの石灰やごみなどが沈殿しているので、その部分が一緒に入らないように、容器を回しながら静かに静かに布の上に注いでいきます。もしゴミも一緒に水の中に舞い上がってしまったら、焦らずに一旦作業を中止して、時間を置いてから再開しました。
泥藍の完成
泥藍の完成です。マヨネーズか歯磨き粉くらいの固さだと思います。この状態で保存しておきます。文中でもお話ししましたが、泥藍は水に溶けない状態なので、このままでは布を染めることはできません。微生物の力を借りて、染められる状態、すなわち藍を「建てる」作業を行う必要があります。
今回、庭で藍の茎葉を20kgちょっと収穫し、作ることのできた泥藍はたったの1.7kgほどです。どれだけ本物の藍染めは手間がかかり、貴重なものであるかが分かりました。
藍を建てるというと、乾燥葉に水をかけながら発酵させた「すくも」を作る方法が一般的だと思います。今回の泥藍作りは、琉球藍を栽培されている方から教わりました。無鉄砲に藍をまいたはいいものの、いざ収穫する段階でどうしたらいいのか分からない私に、泥藍の化学的な理論から分かりやすく教えてくださって、本当に感謝しています。こんなに素晴らしい体験をすることができました。この泥藍を使って、布を染めるのが今から楽しみです。